— Delirious New York Diary

「誰も知らない」

日本より遅れること半年、とうとう全米で公開が始まった。

2時間の間、息が詰まるほどの緊張感が続く。これは何処から来るのだろう。
観客はこの映画が実話をもとにしていることをたいてい知っているだろう。その時点で、是枝監督の目論見はすでに見る前から半分達成されている。この映画に登場する、見て見ぬ振りの傍観者である大人達と観客は同じ視点にあり、そこから子供達を見続けることをこの映画は強制する。それは監督自身も同じであるのを知っていて、だからこそカメラは子供達の繊細な心の動きや動作を見逃すことなく捉えようとする。

もちろんこの映画のテーマが今の日本の社会の「かさぶたの出来ない傷」のような影の部分を扱っていることにも大きな意味がある。でもそれに対して感傷的/感情的な反応を求めることをせず、(そうしてどうなるというのだろう?「まっとうな親になろう」と考え直させること?)子供と大人、観客ー監督と子供という状況/立場関係をはっきりさせることで見る者の視点を同一の次元に引き戻す。それは傍観者という立場を観客に強いることで超えがたい距離のあることだけは自覚させられながら、感情はどこまでも対象である子供たちと自らが属する大人世界の身勝手さにとらわれ続けるよう仕向けられた罠なのだ。無自覚こそが弱者の存在そのものをも消し去ってしまうことを喚起することーそれを達成した時点でこの映画の持つ力は静かに、だが確実に広がってゆくように思える。

4 comments
  1. Caroli-ta Cafe says: 5月 22, 20051:10 AM

    「誰も知らない」

    前略 クエンティン・タランティーノ様昨日、「誰も知らない」 を観ました。業界でも“日本オタク”と評判のあなたが絶賛していたこの映画。私、「タイトル? なんか暗そうだし・・・」   「やぎら君? 賞を取るまで誰も知らなかったし・・・」   「日本映画? 独特

  2. Carolita says: 5月 22, 20051:13 AM

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    過去記事ですが、遅ればせながらT/Bさせて頂きました。この映画は語りたい気持ちにさせる一本ですね。今後ともよろしくお願いします。

  3. hage says: 6月 19, 20051:28 AM

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    この映画に米国人がどういう感想を持つのか、物凄く興味があります。
    よろしければもっと詳しく教えて下さい。

  4. ks530 says: 6月 19, 20054:55 PM

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    hageさん(でよろしいのでしょうか…)
    アメリカでの評価を、メディアがいかに取り上げたかという点で書いてみました。そこに、この映画のもつ力があると思ったからです。この事件がアメリカ人にとって特殊なものに映るかどうかということについては、映画を見た後では自分にとって大きなポイントではないように思いました。
    もちろん、映画を見る前にこの事件のあらすじを読んだだけの時点でなら違った感想はいろいろあるでしょう。でも映画館の満席の人たちは真剣に映画に見入っていましたし、映画が終わったとにちらほら聞こえた感想も事件のディテールにではなく、映画の突きつけた何か大きなものに動かされた、といった意味のものを聞いたように思います。(年齢層は高かったし、この映画を見に来ているのが知識層というのも事実)
    この映画を見た友人(中国人、韓国人、香港人、アメリカ人、南米系、ヨーロッパ系ひとそろい)に聞いても、感想はだいたい僕に似たものになりました。繊細さと緊張感、何かを突きつけられているような感覚、部外者であること、何もできないこと、もしかしたらこういったひずみを生み出すことに加担しているかもしれないという罪悪感、いろいろ出てきましたが、彼らの生まれ育った社会では起こりえない事件だとは誰一人考えなかったようです。特殊なようでいて、どのような社会でも起こりえる、だけど人の目に留まり得ない事件だと皆考えたようでした。その次元で、彼らは個人的にこの映画を受け止めている。そこに、僕としては大きな意味を感じました。

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