— Delirious New York Diary

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オーディオ

何年も放置していた当ブログ。実際めんどくさがりの自分には短く毎日何かを書く、みたいな習慣は身に付かない。どちらかと言えば、何か思ったことを少し寝かせながら考えて、一まとめに書く、というスタイルである。このやり方の欠点は、「思ったこと」がいくつか重なるとあっちこっちに思考が飛ぶので、結局のところまとまらないでいつの間にか霧散してしまう点だ。

そこで、ある程度テーマを絞ることにした。建築だったら建築、音楽だったら音楽、オーディオだったらオーディオを大きなテーマとして、その中でもう少し具体的なテーマを選ぶ。オーディオ → 真空管アンプ、みたいな感じで。それならばもう少し、備忘録的にでも書く気になるかもしれない。何かをやった日には、書きたくなるではないか。

というわけで、久しぶりのブログのテーマは「オーディオ」、そして今回は真空管アンプである。最近、オーディオ界隈では多少の広がりを見せている真空管アンプであるが、ニッチであることには変わりがない。それでいて、非常に奥の広い世界が広がっている。枯れた技術であるが、そこに魅力がある。アナログレコードのブームもかなり定着した感があるが、そこに通じるものがある。というか、アナログレコードとセットに考えられそうなのが真空管アンプである、と思う。

真空管 Triode TRK-3488_11

Triode社には多くの真空管アンプがあるが、キット製品は時々販売されるモデルのみで、これは真空管 EL34 とKT88を差し替えて使えるモデルである。

ネットで調べてみると、うかつには手を出せない奥の深さがある(手は出ても金は出ないので)。アナログレコードの魅力の1つに「大きなレコードを手に取り、ジャケットからうやうやしく取り出してプレーヤーに置く」一連の動作=儀式」があり、さらにはCDにはない、ましてやデジタル音源からは得られない感覚としてレコードの重さや大きなジャケット、盤面の迫力、温かみのある音といった「何か」別の満足感がある。そして、レコードプレーヤーの繊細さ。カートリッジを交換すれば音が変わり、その微細な信号をいかに増幅して再生するかに苦心する。その一連の流れや作業そのものがアナログレコードの魅力であり、そこにデジタルではなく「アナログな」真空管アンプを加えてみたいと考えるのは自然な流れなのかもしれない。音楽を聴くことがいつの間にか生活の空気のようなものになり、それはそれでいいとしても「じっくり」音楽を聴いて楽しむことが減ったように思うが、久しぶりに「スキップ」したり「選曲」することもままならないレコードで聴いた「音楽」は、かつてないほどに心を打つものだった。

真空管 Triode TRK-3488_9

真空管はかつて普通の電気部品であったものの、次第に別のより効率の高い部品に取って代わられていった、古い製品である。(ギターアンプなどでは今も第一線で活躍しているが)10年前であれば、白熱電球はまだ市場に存在したが、それが蛍光灯型になり、今やLEDに取って代わられた。真空管は白熱電球に近い部品で、電球よりもさらに早く一線から退いたはずが、今や古いほどヴィンテージとして高値で取引されるものになっている。まだ古い電気機器が広く使われている旧東側諸国や中国ではまだ製造されているが、日本では現在製造している会社は残り少なくなっている。

真空管アンプの仕組みについてはあまり深追いしないことにしたが、製造メーカーの違いで真空管を楽しんだり、交換して楽しむ世界があると知った。そして調べていくうちに、自分でアンプを組み立てたり(できる人は当然回路図から設計する)、それを一部楽しめるキットがあることもわかった。それがわかると、どうしても完成品を買うだけでは満足できない気がしてしまう。かといってゼロから作り上げることは自分の知識では難しい。そうして探し当てた製品が、Triode社の真空管アンプキットであり、いろいろ考えた上その中の「TRK-3488」を選択した。

このキットは多分、ちょっと電気工作をしてみたいという、初心者に向けたものだと思う。その代わり、完成した製品は組み立てキットにありがちな「ガレージ感」ではなく、売り物としてのデザインや品質のクオリティを追求したものになっている。塗装の仕上げや前面・背面パネルの質感も良い。難しい部分はすでに組み上げられており、回路も基盤化されているので、部品を基盤に半田付けしていくだけである。ていねいに番号付けされた部品を対応する基盤の番号位置に取り付け、半田付けしていくだけである。半田付けをあまりしたことがない人でも、基盤に差し込んで半田付けするだけで良いので、進めていくうちに慣れてうまくできるようになるはずだ。そして、週末1日をかければ完成する分量なのもうれしい。十分な達成感も得られる。

真空管 Triode TRK-3488_1

キットはここまで出来上がった状態で送られてくる。

抵抗やコンデンサー、ケーブルなどが分別され、番号付されている。

抵抗やコンデンサー、ケーブルなどが分別され、番号付されている。

基盤をいったん取り外し、基盤上の番号に合わせて部品を取り付けていく。半田付けは可能な場合は表裏に施す。

基盤をいったん取り外し、基盤上の番号に合わせて部品を取り付けていく。半田付けは可能な場合は表裏に施す。

部品を番号に合わせて取り付け、半田付けしていく。それなりの量があるが、番号付されているので迷うことはあまりない。

部品を番号に合わせて取り付け、半田付けしていく。それなりの量があるが、番号付されているので迷うことはあまりない。

部品を全部取り付けた後、本体に戻す。後はケーブルの結線のみ。

部品を全部取り付けた後、本体に戻す。後はケーブルの結線のみ。

部品の取り付けよりもケーブルの結線の方が難しかった。オーディオ用のはんだは2m用意していたが、ギリギリの量。

部品の取り付けよりもケーブルの結線の方が難しかった。オーディオ用のはんだは2m用意していたが、ギリギリの量。後は底板を戻し、これで組み立ては終了。

 

組み立て後、電源のLEDが光らない不具合があったが、これはソケット付きのケーブルの差込が逆なだけだったのですぐに治った。真空管がほんのりとオレンジ色に光を放ち、温かくなったのちに音楽を再生する。初めて音が出た時の満足感は、やはり完成品の場合とは違うなんとも言えないものがある。苦労した甲斐があるというものだ。

ほんのり光る真空管。初めての体験。

ほんのり光る真空管。初めての体験。

まずはアナログレコードの音を聞いてみると、やはりいつものトランジスターアンプとは音が違う。まだエージングも済んでいないだろうが、いつもよりもだいぶ陰影が濃い。もちろん、最近いつも使用しているスピーカーではなく以前のスピーカーを引っ張り出してきたこともあるだろうが。これからも音が変わっていくだろうし、真空管を変えて遊んでみるのもいい。

重さもあり、いい高級感と精密感があって、いいオーディオ機器を所有する所有感も得られる。

重さもあり、いい高級感と精密感があって、いいオーディオ機器を所有する所有感も得られる。

ただかなり熱くなる。夏に使うのはよろしくないという情報はその通りらしい。そこも逆にアナログらしいところであり、一日中絶え間なく音楽を流すような最近の聴き方には向かないが、レコードを1枚、通しで聞いたりといった、「集中して音楽を聴く」聞き方には向いている。

音楽サーバー(I O DataのSoundgenic) に取り込んだデジタル音源もこのアンプで聞いてみた。スピーカーも違うので一概には言えないが、最近聞いていた音と比べると粗さもありつつ、濃淡の濃い音が聞こえてくる。
これで性格の違うシステムが2系統になったので、聴く音楽によって変えてみるのも良いかもしれない。

巣篭もりが充実する、良い物を手に入れた。

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