— Delirious New York Diary

Appleらしさ

この所キルギス関連の記事しか書いていなかったが、ラマダン入したキルギスは連休になっているため動きがない。
久しぶりにその他の記事を書いてみる。

先日からAppleは「Tomorrow is just another day. That you’ll never forget.」と、なにか新しい発表があることをアナウンスしていた。通常新製品やサービスの発表にはプレスコンファレンスを行うAppleが、今回はティーザーのような直前のアナウンスで皆を煙にまいた。

Appleのスティーブ・ジョブスは今年中にまだ重要な発表があると公表していた。iTunesのクラウドサービスなどが囁かれた中、このアナウンスのメッセージを謎かけに取った人が「Beatles」の楽曲追加と断言し始めた。Wall Street Journalもそのひとつで、その後は発表前からCNNやBBCなど一日中同じ憶測を報道し続けていた。
アナウンスのメッセージはPaul McCartneyのソロ曲のタイトルだとか、時計の並んだメッセージ画面が「HELP!」のジャケットに似ているだとか、一気に「Beatles」説が盛り上がった

結局、iTunesで予告よりも早い時間に配信が始まった。Beatlesのappleレーベルと商標を巡り長年裁判を繰り返してきたAppleだが、とうとう和解し音楽配信サービスに参加したことになる。

そういったことはさておき、今回のやり方は「Apple」らしさに満ちていて素敵だと感じた。「(そんなことだったかと)驚いた」「がっかりした」という意見が特に日本では多いようだが、今回の発表とそのやり方はAppleがただ単にコンピューターやソフト、そしてiPodやiPhoneを売るだけの企業ではないことを強く印象づけるものだった。
以前、Appleは「Think different.」というキャンペーンを行い、著名な人物の写真と合わせ、「想像力」をもとにした「創造力」を生み出すツールとしてのApple製品プロモーションを行った。その時のやり方に似ていなくもない。

「狂った人たちへ。はみ出し者。反抗者。問題児。四角い穴の丸い杭。物事を別の形で見るひとたちへ。彼らはルールを好まず、現状になどかまってない。
彼らを引用してもいい、彼らに反論しても、崇めても、けなしてもいい。でもあなたに出来ないことーーそれは彼らを無視すること。
なぜなら彼らは物事を変える。人類を前進させる。彼らを狂っていると見る人がいる中で、我々は彼らに叡智を見る。
世界を変えることが出来ると考えるほど狂った人こそが、世界を変えていく人だから」

言ってみれば、Appleという会社はBeatlesの曲を聴くためだけにでもiPodを作り出そうとする人たちの集まりだという事かもしれない。それ程、Beatlesを自らのサービスに加えることで世界中の人々がこの音楽を聞くことが大きな意味を持つことなのだよ、というメッセージをジョブスは伝えたかったのだろう。
自己満足との声も聞かれるだろうが、ジョブスはその「自己満足」を、多くの人々もまた、同じように求めているものだと確信している。自分で完結する満足ではなく、世界と繋がっていることから得られる満足を彼は目指しているように思う。Pingサービスを加え、単に音楽を買うだけでなくソーシャルメディアとして他のファンと繋がるツールも加わった。自ら作ったソフトウェアを世界に発信するステージにもなっている。iTunesは巨大な活きたコミュニティーとしての存在を強めつつある。

Apple Computer Inc.を立ち上げ、Macintoshを発売してから36年、彼の意識はほとんど変わっていないように見える。世界に散らばる魅力的なものをコンピューターを通して集めたり、自ら創りだして発信したりするための、それ自体もまた魅力的なツール。そこに集められる世界の魅力的な断片の一つとして、Beatlesは自分のコレクションのみならず、世界の人々の間でシェアされ続けるものだと語りかけているようだ。
仏作って魂入れず。物作りに際して最も大切で、難しいもの。その意味をよく考えるべきなのは誰だろう。

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